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今月の本

Wild Dark Shore

この本の舞台は、南極とタスマニア島の中間地点に位置する小さな島、Shearwater Islandである。この島は架空の場所であるが、実在するMacquarie Islandを基にしていると作者は本の最後で説明している。Macquarie Islandは、四百万ものアザラシ、ペンギン、海鳥の生息地でもある。

この作品は最初から最後まで「死」を感じさせる緊迫感と喪失感に満ちており、読者は荒れ狂う海の厳しさ、雨、雷、そして寒さを通して、その世界の息苦しいほどの臨場感を味わうことになる。物語は、一人の女性がこの島に漂着し、父親と三人の子どもたちによって救助される場面から始まる。彼女がなぜこの島に来たのか、そして一家が何をひた隠しにしているのかが、物語の進行とともに少しずつ明らかになっていく。島にはオーストラリア本土と連絡を取るための通信設備がすべて破壊されており、救助を求める手段はなく、燃料や食料もわずかしか残っていない。四人はまさに孤立無援の状態にあった。

この島には、世界中から集められた植物の種を貯蔵するタンクがあり、その温度調節などの管理を担っているのが父親である。しかし、地球温暖化による海面上昇の影響で、島が海に沈む可能性が高まり、貯蔵された種子を別の場所に移すことが決まり、一家も島を離れることになっている。ノルウェーのSvalbard Global Seed Vaultも、世界中の植物の種を保存していることで知られているが、2016年には永久凍土の融解により水害が発生したという。この点において、この作品は気候変動がもたらす自然の脅威に対して強い警鐘を鳴らしているといえる。

一家の子どもたちはそれぞれ異なる関心を持ち、彼らの言動を通して読者は動植物に関する多くの知識を得ることができる。長男(18歳)は鯨に強い関心を抱き、grey whale、humpback whale、orca、sperm whaleの鳴き声を研究している。Humpback whaleが人間と同様にempathyを持つということも、この本で知った。次女(17歳)はアザラシやペンギンと一緒に過ごすのが大好きである。英語では、鯨の子どもをcalf、アザラシの子どもをpupと呼ぶ。末っ子(9歳)は生物学に興味を持ち、さまざまな種の話をしてくれる。鳥の羽に潜んで世界中に広がる賢い種や、焼け野原にだけ種を放出する植物の話は、読者の心に強く残るだろう。世界で最も翼の長い鳥として知られるAlbatrossや、bushfireが起きた際のwombatの行動も印象的である。作品中にはオーストラリア英語も多く登場し、brekkyやcuppaといった語が見られる。

この物語は、気候変動の恐ろしさと、それに抗いながら生き抜こうとする人間と動植物の強さの両方を描き出し、過酷な自然の中で生きようとする存在すべてへの深い敬意に満ちている。

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