今月の本
Blended
主人公の11歳のIsabellaは、黒人の父親と白人の母親の両親が離婚し、一週間ごとに父親と母親の家を行き来する日々を過ごしている。父親は弁護士でジーンズにもアイロンをかけるほど身だしなみに気をつけている―これは黒人だからと言われないためだが、イザベラはそこまでしなくてもと思う。住まいも黒人が誰も住んでいない地域で豪邸である。上流階級のためのインテリアデザイナーのイザベラより4歳年上の少年のいる黒人女性と再婚を考えている。母親はレストランチェーンストア、ワッフルハウスのウエイトレスで、ボーリング場の支配人との再婚を考えている。家を行ったり来たりのイザベラには、自分の家はない。父親の家ではIsabellaと呼ばれ、母親の家ではIzzyと呼ばれ、アイデンティティも定かでない。
学校では黒人の友人も白人の友人もいて楽しく過ごしているが、ショッピングセンターで黒人の友人Imaniと高級なドレスショップに入るとキャラメル色のイザベラは気がつかないが、黒人であるImaniは、警備員が、黒人は万引きをするという偏見から二人を追い出したと気づく。
人々の人種差別に対する鈍感さ、固定観念による差別、アメリカ史にある人種差別が依然と存在していることを読者は知らされる。
学校でも、黒人リンチを暗示するような事件が起こり、イザベラにも同じような事件が、黒人に対する固定観念をもつ警察官によって引き起こされる。アメリカのそういった環境の中で暮らしたことのないものでないとわからない恐怖や不安が繊細に明瞭に書かれている。
けれども、物語の最後にピアニストになる夢を持っているイザベラがピアノを通して学んだことを理解する場面がある。明るい未来を暗示しているかのように。― ”how harmony is only achieved through
the trick interplay of black and white keys”
子どもよりも大人に読んで欲しい本である。
